日本老年歯科医学会代議員|日本摂食嚥下リハビリテーション学会評議員:
大久保 正彦インタビュー


「摂食嚥下って何?」「具体的には、歯医者さんが何をしてくれるの?」
そんな疑問を、日本老年歯科医学会代議員であり、日本摂食嚥下リハビリテーション学会評議員も務める「マモルイエロー」大久保 正彦先生に、介護経験を持つインタビュアーが直撃しました!
資格・所属学会
医学博士
日本老年歯科医学会 代議員
日本栄養治療学会(JSPEN) 学術評議員
日本摂食嚥下リハビリテーション学会 評議員
日本栄養・嚥下理学療法学会 評議員
日本有病者歯科医療学会 専門医・指導医
日本口腔外科学会 認定医
日本嚥下医学会 嚥下相談歯科医
目次
- アゴを含め骨折10回!?「ストローでの食事」が僕の原点
- なぜ「摂食嚥下」をメインに? ― 3つの武器で支える患者さんの食べたい思い
- 40代から始まる「お口の衰え」のサイン「オーラルフレイル」
- 病院は「治療」の場、在宅は「生活」の場
- 持病があっても安心 医科と歯科の架け橋「有病者歯科」
- 「ダメ」ではなく「いいよ」と言わせる口実にしてほしい
- 取材後記 越谷周辺で介護に悩む方に、この「食べるためのサポート」が届きますように
- 教えてマモルイエロー!摂食嚥下Q&A
- 摂食嚥下・口腔外科 担当:大久保 正彦 論文のご紹介
- 摂食嚥下・口腔外科 担当:大久保 正彦 著書のご紹介
アゴを含め骨折10回!?「ストローでの食事」が僕の原点

先生、ご出身はどちらですか?
生まれも育ちも東京の二子玉川です。
子ども時代はBMX(バイシクルモトクロス)という自転車競技に没頭していました。
小学校で日本一になり、世界選手権にも出場したんですよ。

摂食嚥下
大久保

世界選手権!かなりハードな競技ですよね?
はい、実はアゴも含めて10回も骨折しています(笑)。
アゴを骨折すると口が開かないので、ストローで口の端からドロドロの栄養を流し込むしかないんです。
「食べたいのに食べられない」という経験を身をもって味わったことが、今の診療の原点かもしれません。

摂食嚥下
大久保
なぜ「摂食嚥下」をメインに? ― 3つの武器で支える患者さんの食べたい思い


口腔外科の認定医でもある先生が、なぜ「飲み込み(摂食嚥下)」を専門にされたのですか?
大きな理由は、訪問診療における「1サイクルの完結」に気付いたからです。
訪問診療には「3つの軸がある」と考えています。
1. 感染源となるダメになった「歯を抜く」こと(口腔外科の技術)
2. しっかり噛める「入れ歯を作る」こと
3. それらが機能しているか「飲み込みを診る」こと(摂食嚥下)
この3つが揃って初めて、患者さんは「口から食べる」ことができます。
自分の口腔外科としての経験と、全身疾患の知識をすべて活かせるのがこの分野だったんです。

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40代から始まる「お口の衰え」のサイン「オーラルフレイル」

「飲み込みが悪い」というのは、高齢の方だけの問題でしょうか?
いえ、実は40代から機能は落ち始める(オーラルフレイル)と言われています。
・大きな薬が飲み込みづらくなった
・歯科治療中の水でむせるようになった
・以前より声がかすれる
これらは「口腔機能低下症」のサインかもしれません。
加齢や病気で噛む、飲み込む、話すなどの機能が衰えてしまうのです。
飲み込むときって、ノドやベロの周りの様々な筋肉が巧みに連携するから、むせずに済んでいるんですよ。

摂食嚥下
大久保

「ゴックン」の仕組みって、実は複雑なんですね。
そうなんです。
飲み込む瞬間、のどぼとけを引き上げる筋肉(舌骨上筋群:ぜっこつじょうきんぐん)が働いて、気管にフタをし、食道を開きます。

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大久保



この筋肉が衰えたり、首の後ろが凝り固まって食道が開きにくくなったりすると、誤嚥(ごえん)の原因になります。
私たちは内視鏡(VE)を使ってのどの動きを直接確認し、「おでこ体操」のような筋トレや、リラクゼーション、食事の姿勢などを提案します。

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大久保



病院は「治療」の場、在宅は「生活」の場

先生は病院と在宅、両方で診療されていますが、違いはありますか?
病院は「退院させるために安全第一」で評価をします。
でも、家に戻ればそこは「生活」の場です。
「一生とろみ食です」と言われた人でも、お口の状態を整え、適切なサポートがあれば、また普通のご飯を食べられるようになるケースはたくさんあります。
僕は「本来食べられるはずの人を見つけるパトロール」だと思って訪問しています。
「大丈夫、これなら食べられますよ」という一言で、患者さんの表情がパッと明るくなる。
その瞬間が一番嬉しいですね。

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大久保

持病があっても安心 医科と歯科の架け橋「有病者歯科(ゆうびょうしゃしか)」

先生は「日本有病者歯科医療学会」の専門医・指導医でもあるそうですが、有病者歯科(ゆうびょうしゃしか)って何ですか?
薬でいえば「血液サラサラ」「骨粗鬆症のお薬」「自己免疫疾患の免疫抑制剤」「抗がん剤」を飲んでいる方の持病や体調に合わせて、お医者さんと連携しながら安全に進められる歯医者さんが「有病者歯科」です。
僕は病院での勤務経験が長いため、主治医の先生とスムーズに連携(対診:たいしん)をとることができるので、「病気があるから歯医者は怖い」と思わず、安心してお任せください。

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「ダメ」ではなく「いいよ」と言わせる口実にしてほしい

最後に、介護を頑張っているご家族や患者さんへメッセージをお願いします。
専門家だからといって「あれはダメ、これはダメ」と指導するつもりはありません。
むしろ、「どうすれば好きなものを食べられるか」を一緒に探すパートナーでありたいと思っています。
「職業」として関わるのでなくて、まず「人」として関わることが大事だと考えて、患者さんを含め、患者さんの周りの方と「多職種連携(言語聴覚士、訪問看護師、ケアマネージャーなど)」をしています。
「先生がいいって言ったから、これ食べよう!」という、前向きな口実として僕らを使ってください。
食べることは、人生の大きな楽しみですから。

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取材後記 越谷周辺で介護に悩む方に、この「食べるためのサポート」が届きますように
「もっと早く知っていれば…」。
インタビュアー自身、母の介護で「むせ」に悩み、最後は食事を諦めてしまった後悔があります。
あの時、大久保先生のような専門家に相談できていれば、母に大好きな果物を最期まで食べさせてあげられたかもしれません。
越谷周辺で介護に悩む方に、この「食べるためのサポート」が届くことを切に願っています。
教えてマモルイエロー!摂食嚥下Q&A
Q. 摂食嚥下(せっしょくえんげ)リハビリテーションでは、具体的にどのようなことをするのですか?
A. 一言でいうと、「感覚のケア」と「喉の筋トレ・リラクゼーション」の2本立てです。
単に「飲み込む練習」をするだけでなく、以下の3つのステップで「食べる力」を総合的に引き出します。

マモル
イエロー
1.「感覚」を呼び起こす(お口の環境整備)
お口の中が汚れていたり乾燥していると、食べ物の味や風味を感じにくくなり「食べたい」という意欲が湧きません。
感覚が鈍ると飲み込み「反射」も悪くなるため、まずは口腔ケアや保湿を行い、お口のセンサーを正常に働かせるます。

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2.「筋トレ」で飲み込む力をつくる(舌骨上筋群の強化)
飲み込む瞬間、喉仏(のどぼとけ)はグイッと上に持ち上がって気道にフタをします。
この動きを担うのが「舌骨上筋群(ぜっこつじょうきんぐん)」という筋肉です。
その筋肉が落ちると、喉を持ち上げるのに大きな力が必要になります。

マモル
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トレーニング法: 手とおでこを押し合う「おでこ体操」などで、喉を引き上げる力を鍛えます。

マモル
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3. 「ゆるめて」通り道をつくる(食道を開く)
食道の入り口(輪状咽頭筋:りんじょういんとうきん)は、普段は閉じており、飲み込む瞬間だけ「緩んで」開きます。
課題: 首の後ろが固まっていたり、顎が上がった姿勢が続くと、この筋肉がうまく緩まず、食べ物がつかえてしまいます。
対策: マッサージやリラクゼーションで首周りの緊張をほぐし、食べ物がスムーズに食道へ流れる道を作ります。

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イエロー

Q. 素人の興味本位の質問ですが、論文ってどうやって書くんですか??
A. 僕が書いている論文は、日頃の臨床(りんしょう:患者さんと相対する場面)で疑問に思ったことを、せっかく勉強したなら形に残そうかなと思って書いています。
日常の臨床の中で分かっていないことはもっとたくさんある・・・ぼくはそういう「痒い所に手が届く作業」をやっているという感じです。

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摂食嚥下・口腔外科 担当:大久保 正彦 論文のご紹介
一部ですが、大久保先生の論文をご紹介します。
1. 摂食嚥下リハビリテーションとしての口腔ケアを新たな視点で捉える
出典元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kds/79/2/79_RV00010/_article/-char/ja
2. The importance of integrated care in the management of dysphagia among homebound older patients with heart failure: a narrative review
出典元:https://www.frontiersin.org/journals/oral-health/articles/10.3389/froh.2025.1738507/full
3. Assessing Swallowing Function is Important Upon Admission to Community-Based Integrated Care Wards. A Retrospective Observational Study
出典元:https://www.dovepress.com/articles.php?article_id=110401















