摂食嚥下リハビリテーション

目次

  1. 「摂食嚥下リハビリテーション」について専門医 大久保先生に聞いてみた!
    摂食嚥下(せっしょくえんげ)リハビリテーションとは?
    言語聴覚士さんが「飲み込み」のサポートをします(多職種連携)
    「大丈夫だよ」と言うだけですごく感謝をされる(笑)
  2. 当院の検査・診断メニュー
  3. もぐもぐゴックンをあきらめない!「摂食嚥下リハビリテーション」訪問歯科診療のご案内
  4. 大久保先生が摂食嚥下(せっしょくえんげ)をメインで診療している「理由」2つ
  5. 最後に「いいよ」と言わせるための口実として使っていただければ
  6. 教えてマモルイエロー!摂食嚥下Q&A

その2:【治療・リハビリ編】

※この前の段階はこちら
その1:【症状・原因編】40代から始まる「むせる」「飲み込みづらい」は、お口の衰えのサイン

1.「摂食嚥下リハビリテーション」について専門家、大久保先生(マモルイエロー)に聞いてみた!

「摂食嚥下のリハビリって何をやるの?」
「どういう風に良くなるの?」
「家族が出来ることがあるの?」

そんな疑問を直接「日本老年歯科医学会代議員」且つ「日本摂食嚥下リハビリテーション学会評議員」であり現場でも大活躍の大久保先生に、介護経験ありのインタビュアーが直接聞いてみました!

摂食嚥下(せっしょくえんげ)リハビリテーションとは?

「摂食嚥下リハビリテーション」って、実際何をするんですか?

簡単に言うと「筋トレ」と「感覚」です。

マモル
イエロー

2本立て?

感覚は・・・例えば口の中が汚かったら、感覚もモヤモヤしているじゃないですか。

お酒を飲んで歯を磨かずに寝たら、次の日起きていきなり食事する気がしないから、うがいをしたい、歯を磨きたい、となりますよね。
口腔感覚が落ちていたら、まず「味」を認識できないし「食べ物」を食べ物と分からない、「風味」が分からないと「食べる意欲」が湧かないし「反射」も悪くなる。
お口が乾燥していても、同じことが起きてきます。

あと、飲み込むときは、のどぼとけが「ゴックン」と上にあがるじゃないですか。
普段息を吸っているときは、空気の気道が開いて、食道は閉まっている。(下記の手のように)
ここが気管(右手)で、ここがフタ(左手)だとしたら、ゴックンとこうなるんですね。
飲み込む瞬間って、息していないですよね。

マモル
イエロー

(飲み込んでみる)確かに。

その時に、ノドボトケを上に持ち上げてくれる筋肉が「舌骨上筋群(ぜっこつじょうきんぐん)」といいます・・・

オトガイ舌骨筋(おとがいぜっこつきん)
顎舌骨筋(がくぜっこつきん)
顎二腹筋(がくにふくきん)
茎突舌骨筋(けいとつぜっこつきん)
とあるんですけど。

マモル
イエロー

ココの筋力が落ちてきちゃうと、ココを持ち上げるのに「よ~いしょ」と力が必要になる。
そのためにココを鍛えてあげる体操に「おでこ体操」(下記画像)があります。

マモル
イエロー

あと、首の後ろが固まっちゃうと、食道が開かなくなるんですね。

マモル
イエロー

食道が開かなくなる?!

食道が開くためには、ココにある「輪状咽頭筋(りんじょういんとうきん)」が緩む必要がある。
例えば「肛門」は、普段閉まっているじゃないですか。
便が出る時は「肛門括約筋(こうもんかつやくきん)」がゆるむから、便が出る。
それは食道も同じことで、普段は閉じているけど「ゆるむ」ことが大事なんです。

寝たきりでご高齢の方は、

口を開いてアゴが上がっていることが多い

食道が開かない

ゆるめてあげるマッサージやリラクゼーションが必要


なんです。

自分で首根っこをギュっとつかんでいるのと同じ状態で、ツバを飲み込もうとすると飲み込みづらい=食道が開かない状況なんですよね。
食事の状況を見たり聞いたり、内視鏡検査(※)をして「感覚が悪いのか?」「ベロの動きが悪いのか?」「ノドの上りが悪いのか硬いのか?」を診て「こういうリハビリがいいのでは?」という提案をします。

マモル
イエロー

※参考:マハロ会での「内視鏡による嚥下障害と嚥下機能評価に関する研修実習」

言語聴覚士さんが「飲み込み」のサポートをします(多職種連携)

そのような筋トレを在宅介護をしているご家族やヘルパーさん、訪問看護さんに、共有する?

ご本人やご家族で頑張ることもあるし、訪問看護ステーションだと「言語聴覚士(げんごちょうかくし)」さんがいるところもあります。
保険制度的にも歯科よりも高頻度で介入できるので、ST(Speech-Language-Hearing Therapist:言語聴覚士)さんにつないだりしたりします。

僕ら歯科医師が評価して、STさんにつなげるのが僕のスタイルです。

マモル
イエロー

摂食嚥下リハビリテーションって、実際どういう事をするのかとずっと気になっていました。
では、越谷近辺の訪問看護、ケアマネージャーさんは結構知っている?

同じ地域で訪問していると、だいたい同じ顔ぶれになって来きますね。
訪看(訪問看護)さん、ケアマネ(ケアマネージャー)さん、結構分かってきたかな。
STさんは分かりますね。

マモル
イエロー

STさんがいる訪問看護ステーション、あります?

ありますよ。
決して多くないので、この辺でも最近は自費のSTさんが出てきて、アポが埋まってきているようです。

マモル
イエロー

それは、脳梗塞の後遺症?

一番多いのは「脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)」です。
麻痺のある方は、ノドも麻痺しているんですね。
ノドの麻痺は治らないことが多いのですが・・・首を曲げると、麻痺している方のノドが閉じるんです。

マモル
イエロー

健康な側だけが使えたりするから、首を曲げて食べたりなどの提案もします。

ただ、介護の基本は「健側(けんそく)から」、つまり麻痺していない方からやる・・・食事介助されたらこっちに向いちゃうから、健康な方が閉じて、麻痺している方が開いちゃうんですよ。
そういった「知識のギャップ」を、訪問介護さんやご家族に埋めてあげる。
そういうのがすごく大事だったりします。

マモル
イエロー

「大丈夫だよ」と言うだけですごく感謝をされる(笑)

居宅の訪問歯科での印象的な話はありますか?

「入れ歯を作って食べられるようになった」という話はいくらでもあるんですけれど、意外と知られてないけど大事だなと思うのは、「この人のポテンシャル(能力)はこれくらいだよ」と教えただけで食べるようになることです。

例えば、ペースト食しか食べていなかった人の口腔や食べている様子を見て
「この人だったらもう少し形のあるものを食べられると思うので、食べてみてごらん」と。
そうすると、本人が「そっちの方が美味しいから」と勝手に元気になっていく。

摂食嚥下
大久保

先生が「一言」言うだけですか?

「本来食べられるんだけど、食べられていない人を見つけてあげるパトロール」をしているだけでも、非常に効果はあります。
そうすると、僕は「大丈夫だよ」と言うだけなんですけれど、すごく感謝をされるという。(笑)
そういうのは大事なんじゃないかなと。
あまり、専門専門しすぎないことも大事なんじゃないかと思うんです。

マモル
イエロー

肩書をみると、めっちゃ「専門専門」していると思いますけど。(笑)

医学博士
日本老年歯科医学会【代議員】
日本栄養治療学会(JSPEN)【学術評議員】
日本摂食嚥下リハビリテーション学会【評議員】
日本栄養・嚥下理学療法学会【評議員】
日本有病者歯科医療学会【専門医・指導医】
日本口腔外科学会【認定医】
日本嚥下医学会【嚥下相談歯科医】

だからこそ説得力が出るんですね。
そういう肩書がありつつ、実は広く浅くの考え方が大事で、自分の幅を持たすためにこういう活動をしています。

マモル
イエロー

自分の親が病院を退院するときに「一生とろみだよ」と言われたけど、退院して摂食嚥下の訪問で評価をしてもらい、しばらく様子を見ていたら普通に飲み食いが出来るようになりました。

病院は「退院させるために治療する場所」、そのあとは「生活」です。
「治療」と「生活」は違うんです。
僕は病院も在宅もどっちも診てますが、同じ人を診ても「提案」は全然違います。
退院のためには「安全」なものを選ぶ・・・病院で肺炎を起こしていたら、いつまでも退院できない、ですよね。
退院するための「評価」と「提案」は変わってくるし、退院したらその人の人生になる。
誤解を恐れずざっくりいうと、死にたくないのか、楽しみたいのか、です。

マモル
イエロー

よく分かります。(インタビュアーは介護経験者)

もちろん制限することもあるし、逆にすごく寛容にすることもある。
僕らの仕事は「提案」する事なので「選択」はお任せするんです。
僕らに1回返してくれれば、そこで僕らは「リスク評価をした」ということになる。
ご家族の心理的な不安を解消したり・・・あとから「私がこんなことしたから、よくなかったんじゃないか」と感じるところでも、逆に「相談した」というプロセスがあれば少し心の支えになるんじゃないかなと。

マモル
イエロー

そういう時にこの肩書は、安心材料になりますよね。

施設側も同じようなことがあって、特養は終の棲家になる場所だから相談されて返してくれればご家族の安心にもつながる、と言ってくれます。
色々な種類の病院、在宅などの「フィールド」ごとに見方が違う・・・僕は全部の「空気感」をバランスよく見たい、と思っています。
急性期(きゅうせいき:病気になり始めの時期)関連の学会、在宅関連の学会、それぞれの学会の先生が「こいつ面白そうだな」と引き上げてくださったからこうなっている、という感じです。(笑)

マモル
イエロー

肩書に「代議員」とありますが、どういう立場ですか?

学会を運営する委員会(ガイドライン作成、保険点数検討)です。
学会の運営に声を掛けられるようになり、その中の仕事も増えてきました。
歯科医院自体の在り方が変わってきています。
歯科医院も、保険制度で必要な機械・システムを入れる対応が必要です。
国としても保険制度でやっている以上、品質をなるべく「標準化」したい。

これからの歯科医院は、クリニック単位でスペシャリストを集めて、患者さんの利便性を高めていく流れが加速すると思います。

マモル
イエロー

2. 当院の検査・診断メニュー

問診・スクリーニング検査

初診時に、問診とスクリーニングを行います。

嚥下内視鏡検査(VE)

鼻から細いカメラを入れ、実際の飲み込みを可視化する検査です。

多職種連携

歯科医師や栄養士、言語聴覚士、ケアマネジャーと連携した包括的な診断を行います。

3. もぐもぐゴックンをあきらめない!「摂食嚥下リハビリテーション」訪問歯科診療のご案内

通院が困難な方のために、自宅や施設で摂食嚥下のリハビリが受けられます。
ご自宅・施設も訪問が可能です。
費用は保険適用になります。

4. 大久保先生が摂食嚥下(せっしょくえんげ)をメインで診療している「理由」2つ

大久保先生が、摂食嚥下に関して「現場」と「評議員」の二足の草鞋を履く、その情熱はどこから来るのでしょうか?
さらに深堀りてみました!

今「摂食嚥下」をメインで診療されていますが、どうして歯科の中でも専門的、且つニッチなところ専門にしたのですか?

もともと埼玉医大(https://www.saitama-med.ac.jp/hospital/)の口腔外科で研修医をやって、そのあと6年間埼玉医大の口腔外科の助教をやってました。
そのあと、杏林大学の耳鼻科で2年間、助教として働いていました。

摂食嚥下をメインにした理由は「2つ」あります。

1つ目は、杏林大学の耳鼻科にいたことです。
杏林の耳鼻科の先生の所で勉強したいと思い・・・耳鼻科の先生と境界領域(耳鼻科か歯科か)みたいな話で揉めるんですけどね。(笑)

埼玉医大にいた時も、耳鼻科と口腔外科が同じフロアにあったんです。
口腔外科は、手術したときに看護師さんから「ご飯、いつから食べられますか?」とか「食事形態(ドロドロ→柔らか)、上げていいですか?」と聞かれた時に耳鼻科の先生と相談したり、内視鏡を見せてもらったりしていた背景があります。

2つ目は、訪問診療をしていたことです。

僕は訪問診療の軸は「3つ」あると思っています。
大きな虫歯やグラグラの歯などの機能しなくなって感染源となっている「歯を抜くこと」が、1つ。
「義歯(ぎし:入れ歯)を作ることができる」が、2つ。
それが機能しているかどうかの「飲み込みを診る」必要があるのが、3つ。

この3つが出来れば、自分で1サイクル回すことが出来るのだなと気付いて、嚥下(えんげ:ゴックン)を勉強するべきだなと。

自分の「口腔外科出身」というところと、「全身の勉強/首のところの勉強」などいろいろな背景が生かせる診療は「摂食嚥下(せっしょくえんげ)」じゃないかと思ったのが大きな流れです。

マモル
イエロー

「摂食嚥下」という言葉が、一般的に知られていると感じますか?

嚥下(えんげ)という言葉は広がっていないと感じますが、「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」という言葉は広まっていると思います。

マモル
イエロー

実際の訪問先は?

在宅、特養(特別養護老人ホーム)、老健(介護老人保健施設)、病院です。

マモル
イエロー

病院?

「歯科がない病院」に訪問に行くのは、すごく意義がある・・・外来の診療で普段やっている歯科治療(入れ歯や虫歯)もやります。
摂食嚥下でいえば、「嚥下内視鏡検査(えんげないしきょうけんさ)」、実際に食事の状況を見て「こういう姿勢にしたほうがいい」「こういうスプーンを使ったほうがいい」と提案する「ミールラウンド」というのを「他の職種の方」と一緒に検討していくことはよくしていますね。
施設では、食事の介助が毎日必要になるので「勉強会」を開催することもあります。

マモル
イエロー

「他の職種」とは?

話すことが多いのは「言語聴覚士」と「管理栄養士」ですね。

マモル
イエロー

在宅の場合、実際食事を作るのは家族やヘルパーさんですよね?
どういうアドバイスするのですか?

具体的には、コンビニで売っているものだったらこんな感じなもので、とお話しします。
「管理栄養士」に訪問をしてもらうことになります。
簡単にできる「調理指導」や「食事指導」もあるのですが、このエリア(越谷)では人手が少なく、なかなかつかまらないのが現状です。

マモル
イエロー

「調理指導」ということは、レシピを渡しておしまいではないんですね?

その場で作っている管理栄養士さんもいます。
それが介護保険制度にも入っていますし、今年(2026年)の医療保険の改定で入りました。

マモル
イエロー

5. 最後に「いいよ」と言わせるための口実として使っていただければ

最後に患者さんにメッセージをお願いします。

専門職だから「ダメ」と言われると思わないでほしい。

マモル
イエロー

ん??

「ダメだよ」と指導されると思われがちですが、「いいよ」と言わせるための口実として使っていただければと思います。
一番ベストな方法を一緒に探していこうというのが「訪問診療」のスタンスなので。

食べるということは必ず1日3回あることなので大事なことだから、臆せず聞いていただきたいです。

マモル
イエロー

6. 教えてマモルイエロー!摂食嚥下Q&A

Q1. 摂食嚥下(せっしょくえんげ)リハビリって何をするの?

A. お口とのどの「筋トレ」です。
マッサージで筋肉をほぐしたり、体操をして飲み込む力を鍛えたりします。
また、お口の中をキレイに掃除して、食べ物の味や感覚をしっかり取り戻すためのケアも行います。

マモル
イエロー

Q2. また普通のご飯が食べられるようになりますか?

A. 「食べる楽しみ」を諦めないための提案をします。
病院で「とろみが必要」と言われた方でも、検査をすると「実はもっと形のあるものが食べられる」と分かることもあります。
ご本人の力を正しく見極めて、安全においしく食べる方法を一緒に探します。

マモル
イエロー

Q3. 家族はどんなことを手伝えばいいですか?

A. 頑張りすぎず、まずは私たちに相談してください。
食べさせ方のちょっとしたコツや、コンビニでも買えるおすすめの食材など、ご家族の負担が軽くなるアドバイスをします。
「これ、食べさせても大丈夫?」という不安を解消するのが私たちの仕事です。

マモル
イエロー

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